後藤斎(ごとう ひとし)議員は国民民主党所属の参議院議員(山梨県選挙区、1期)であり、かつて衆議院議員を4期務め、山梨県知事も1期務めたベテラン政治家です¹。1957年山梨県甲府市生まれで東北大学経済学部を卒業後、農林水産省に入省し農政の現場を経験しました²。
その後2000年の衆院選で旧民主党から初当選し、文部科学大臣政務官(鳩山由紀夫・菅直人内閣)や内閣府副大臣(野田内閣)など要職を歴任しました³。2015年には地元の山梨県知事選に無所属で挑戦して当選し、県政の舵取りを4年間担いました。その間、子育て支援や再生可能エネルギー推進、農業改革などに取り組みました⁴。
2019年に知事選で敗れた後、一時政界を離れましたが、2022年の参院選では日本維新の会から比例区に挑戦(落選)⁵。そして2025年、国民民主党公募に応募して山梨選挙区の候補となり、与党・自民党現職を破って約15万7千票(得票率39.3%)で当選、11年ぶりに国政復帰を果たしました⁶。
分析対象期間の2015–2025年は、知事としての活動と国政復帰までの道のりを含み、本レポートではその政治活動全体像と議員復帰後の動向を包括的に描写します。
2025年参院選の選挙公報では、後藤氏は「県民の手取りを増やす。国民の生活を豊かにする。」とのスローガンを掲げ、5つの重点政策を示しました⁷。
第一に「国民・県民の手取りを増やす」として、所得税の減税(基礎控除引き上げ)やガソリン代・電気代の引下げ、消費税率5%への時限的減税など大胆な減税策を提案し、賃上げによって年金受給額も増やす好循環を目指すと訴えました⁸。
第二に「人づくりこそ国づくり」として、教育・科学技術予算の倍増や教育無償化の拡充、教員の長時間労働是正など人への投資を重視し、子育てしやすい社会をつくる決意を示しました⁹。
第三に「農水省の経験を生かして食・農を世界へ拓く」として、国内農業の強靭化による食料自給率50%の目標や、コメ・果樹の輸出産業化など農業立国戦略を掲げました¹⁰。
第四に「山梨の発展に向けて」、観光・農業・再生可能エネルギーを柱に地域経済を活性化し、交通インフラ整備や文化資産の活用によって豊かな暮らしを実現するとしました¹¹。
そして第五の「正直な政治をつらぬく」では、政治資金規正法の再改正による裏金根絶、いわゆる旧文通費(現在の「政策活動費」)の全面公開と廃止、第三者機関の設置による政治資金監視など、政治とカネの改革を訴えています¹²。
選挙公報から浮かび上がるキーワードは「減税」「手取り」「賃上げ」「食料自給率」「観光」「正直な政治」などで、家計支援の経済政策と地方・農業の振興、そしてクリーンな政治改革への強い意志が読み取れます。知事時代に掲げた「ダイナミックやまなし」というスローガンの延長線上で、地域に根差し国政を動かす「県民党」のようなスタンスをアピールしており、地元愛と改革志向が全面に現れたマニフェストとなっています。
2015年以降、後藤氏は2019年まで知事職にあったため国会議員としての立法活動は一時中断していました。2025年7月に参議院議員に就任してから年末までの間に、国民民主党の一員として早速立法活動にも加わっています。
特筆すべきは、同年12月に同党が提出した「政党ガバナンス強化法案」(政党交付金受領政党の組織運営透明化・公正化法案)への関与です¹²¹³。この議員立法は、各政党に党則で最高機関の権限や内部監査体制、支部の情報公開などを義務付け、ガバナンス向上を図る内容で、政党交付金という税金の使途に透明性と説明責任を求めるものです¹⁴。
後藤氏は党政務調査会の筆頭副会長という立場で、この法案の提出者グループに名を連ねました¹⁵。古川元久議員らとともに「国民の税金で賄われる政党交付金だからこそ、各党に一定の統治ルールが必要だ」という趣旨を掲げ、各党に協議を呼びかけています¹。これは彼のマニフェストで掲げた「正直な政治を貫く」という公約にも通じる取り組みであり、国会復帰早々にクリーン政治の制度化に取り組んだ形です。
一方、2025年中の他の法案提出履歴については、後藤氏自身が筆頭提案者となったものは確認できませんでした(就任直後であり、国会在職わずか半年のため個人提案の機会も限られました)。政府提出法案への賛否では、防災関連の法案(後述する水防法改正案など)には前向きな姿勢を示しています。立法活動全体としてはこれから本格化する段階ですが、与党ではない野党議員としてまずは党の政策立案チームで経験を活かし、ガバナンス法案のような提案型の議員立法に関与している点に注目できます。可決成立した法案こそまだありませんが、党内での積極的な立法提言によって存在感を示し始めていると言えるでしょう。